アントレプレナーシップ・エデュケーター道場

お知らせ

2009/12/29

三重県松阪市のミミズ養殖場を訪問!

少し前になるが12月14日(月)、土バンクの学外学習の一環で学生とともに「ミミズの養殖場」を訪問しました。ご案内いただいた(特活)起業支援ネットの西井さん、松阪市社会福祉協議会の職員の方々に、この場を借り御礼申し上げます。
さて、今回のブログは土バンクに関するものではなく、単純にミミズの糞(キャスト)をどのように採取するのかについて関心があったからです。なお、今回訪れたミミズ養殖場は、現在営業を行っていないため、名前を出すのを控えさせていただきました。
そもそも私がミミズのキャストに関心を抱いたきっかけは、2007年、2年前のバーチャルカンパニーでした。その当時は、環境教育の一環として、ミミズを活用した教材等の話が出、競合分析の結果を踏まえ教材ではなく、ミミズを活用した資材に焦点をあてました。愛知万博でも紹介された「ワームゴールド」が参考商品として抽出され、名古屋地区で販売する事業者にヒアリングに行き、大量生産せねばならず日本で同種のものを生産することは不可能との情報を得、その他の理由なく検討を先に進めることを断念していました。
その同じメンバーで、パーマカルチャーで有名なオーストラリア連邦のマレーニに行き、偶然、Worm Farmと出会い、ワームゴールドのような加工資材とは異なるキャストの生成方法と活用方法について知る機会を得ました。この時の記録は、「マレーニ 2007/8/23 3.Worm Farm」で記事にしてあります。
このオーストラリアでの出会いは、学生達にも、私にも強烈な印象として残りました。学生達は「自分たちでもできる」と考え、私は「バクテリアの能力に驚き、化学的ではないものの、目に見えない存在の効用と価値に注目しなければならない」と考えました。前年の2006年に原核微生物を活用したバイオ洗剤の効果を、開発者である微生物的環境技術研究所の平井孝志先生と、同洗剤を扱う名古屋のEco-Branchの鶴田清・紀子夫妻から聞いていたので、「目に見えない存在の効用と価値」を意識したのでしょう。
Img_3819Img_3815いよいよ、本題の「ミミズの養殖場」について話を進めます。養殖されているミミズは、在来種ではなく外来種のシマミミズです。釣り餌用のミミズとして養殖されているものです。同行していただいた西井さん曰く、シマミミズは分解する速度が速く多くのキャストを生成する能力が高い種であるそうです(土バンクにとっても大きな意味があると思います)。
Img_3812ミミズはコンクリートで固められた敷地の上に、コンクリートブロックで囲いをつくった(高さはコンクリートブロックを立てた状態で2つ分)中で養殖されています。オーストラリアのWorm Farmでは、牛糞をシマミミズに食べさせキャストを作っていたので、てっきりこの養殖場でも同じだろうと思っていたら大間違いで、釣り餌用のために工業製品としてしっかりと釣り人の使いやすさを考え、食べさせるものを井村屋から排出される残渣を購入し使用しているという。その理由は、牛糞を試したこともあるが、釣り人が餌として使用する際に滑りがひどくなるため、試行錯誤の結果、食物残渣にしたのだという。さらに出荷にあたっては、数十グラム単位のプラスチック・ケースに入れるのだが、そこには春日井市の王子製紙から調達した紙残渣を入れミミズが食せるようにしている。なお、コンクリートで固められた敷地にも意味があり、モグラの侵入を防ぐためであるという。
ミミズが写っている写真とコンクリートブロックで囲われた中が写っている写真に「白」いものを見てとれるでしょうか?これは、「綿」です。湿度調整、保水の目的で入れてあるそうです。もちろん、ミミズはこの綿も最後は食べます。ミミズ養殖には、「保湿」が鍵であり、湿気が多すぎても乾燥していても駄目、モイスト(moist)状態が最適であるそうだ。この状態(環境)を作るため、自作の散水機で水が撒かれるシステムを作ったりもしたが、結果的に(大きな投資をせず効果をだすためには)「綿」の利用が適しているという。ころ合いを手で判断し、散水する。
(注)流れの中で、ミミズ養殖の方法を学んだ場所のことに話が及び、愛知県一宮市の農家から教わったことがわかった。何と、私の地元ではないか。詳しく聞くと、既に一宮の農家は既に廃業しており、当時の人たちはどこに行ったのかわからないという。
Img_3829土バンクの観点から言えば、また、私が見たオーストラリアのWorm Farmとの関連から言えば、ミミズの糞(キャスト)にも価値がある。養殖場の方と話をしていて「かす」という言葉が耳に入ってきました。これはミミズの糞のことを意味しています。主たる目的が「ミミズの養殖」であるため、糞を「かす」と呼ぶことが習慣化したのでしょう。とはいえ、このキャストは自家菜園に入れたり、乾燥させ袋詰め(1パック約8キログラム、250円で販売)し、近隣に販売しているそうです。化学的検査の結果は、写真を参考にしてください。
私は、「かす」には別の意味も含まれていると理解しています。すなわち、ミミズの糞(キャスト)づくりは極めて生産性が低い。ミミズほど、糞(キャスト)は商用化するボリュームになかなか達しない。ゆえに、「かす」なのです。
ミミズの糞づくりの過程で流れ出る水分。これが着目されず垂れ流し状態になっています。ここにこそ価値があるのではないでしょうか?オーストラリアのWorm Farmのボブの言葉を借りれば、キャストより50倍のバクテリアが含まれている!!!工夫の余地は大きいと思います。鶏糞等の堆肥には、窒素・リン酸・カリウムがミミズの糞より多く含まれているものもあります。違いはバクテリア?残念ながら今の私の知見ではこれに対する答えは持ち合わせていません。仮説ながら、目に見えないものの価値=バクテリアの質と量にミミズの糞(キャスト)の活用意義があるのではないでしょうか。
最後に、ミミズの養殖を苦しい中でも現在に伝承していただいていることに感謝すると同時に、山間の集落で現金収入を得るために苦労して仕事づくりをされてきたことに敬意を表します。そして、その仕事の一つがミミズになった縁を大切に思いたい。深謝!

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