アントレプレナーシップ・エデュケーター道場

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2013/03/17

インストラクショナル・デザイン(ID)の基礎理論を学び、私のアントレプレナーシップ教育を振り返る

2013年3月12日(火)、人材育成コンサルタントの田口光彦氏より、「インストラクショナル・デザイン~教育効果を最大化するための『教育を論理的に設計する技術』」と題する講演を拝聴する機会を得た。大変気づきの多い時間を提供いただいた、田口氏に衷心より御礼申し上げたい。
インストラクショナル・デザイン(以下、ID)とは、「教育・研修の効果・効率・魅力を高めるための手法を集大成したモデルや研究分野、またはそれらを応用して学習支援環境を実現するプロセスのこと」を指す。
~引用:鈴木克明著「インストラクショナルデザインの基礎とは何か:科学的な教え方へのお誘い」『消防研修(特集:教育・研修技法)』第84号(2008年9月)~
今回の講演では、まず、経験学習を実効性のあるものとするためにも効果測定は必須であることが主張され、次に教育効果を測定するツールとして「カークパトリック・モデル」が紹介された。カークパトリック・モデルは、教育研修の効果を測定する米国のスタンダードのモデル。ご存知の方も多いと思うが、次のような特徴がある。
レベル1 Reaction(意欲)~「考え方」~参加者が必要性や意義を理解し、意欲の促進がなされたか
レベル2 Learning(学習成果)~「やること×やり方」~参加者は目的の能力を身につけたか
レベル3 Behavior(行動変容)~「行動」~参加者は実際に職場で活用しているか
レベル4 Results(活動成果)~「成果」~参加者は学習内容を活用してビジネス成果を向上させたか
私が愛知学院大学経営学部で実践しているアントレプレナーシップ教育を、カークパトリック・モデルに照らし合わせて内省取材(自己分析)してみた。粗々の結果であるが、次のように考えられた。
バーチャルカンパニー・プログラム(愛知学院大学経営学部で導入しているアントレプレナーシップ学習)は、学生が社会的な問題として認識したことを社会的ニーズと捉え、それを克服する製品・サービスを生み出すため、シーズ等をもつ企業と連携し商品開発あるいは事業開発を実践することを目的としている。
プログラムの狙いと1年間の到達目標を理解した学生が受講していることを前提にしている(履修要綱での書面、ガイダンスや前年講義での口頭での説明という方法をとって・・・)。
厳密ではないが、前提科目の履修を推奨しており、過半の学生たちは当方の指導に従っているのが毎年の傾向である。また、単位にならなくても2年あるいは3年続けて履修する学生もわずかであるがおり、彼らは後輩に経験を伝えたり、相談に乗ったりする役割を果たす。
さて、このプログラムの課題は、学習の効果測定である。カークパトリックモデルに照らし合わせて、内省取材(自己分析)してみる。
レベル1~レベル4の段階で、効果測定が行われているのは、レベル4のみ。活動成果を、ビジネスプランコンテストの審査員、開発した商品を出品するトレードフェアの審査員等、第三者により評価を受ける。客観的な評価ではないが、実務家による評価をえることで、効果測定としている。
講義が事前登録制をとり、応募者多数の場合は抽選となる。このため、レベル1は学生自らが織り込み済み、納得済みとの理解でいる。(はたして、この認識が適切かどうか、改めて検討を要する・・・)
レベル2に該当する内容は、バーチャルカンパニー・プログラムの受講の前提条件となる科目の履修で習得しているという前提に立っている。もしくは、同時並行的に学習する。よって、企画立案、事業計画、経営者マインド等の理解については、科目評価で習熟度を測定している。
レベル3の行動変容の効果測定は、実施されていない。効果測定の方法という一点をとっても明確にしてこなかった。これが克服課題でもある。
改めて、バーチャルカンパニー・プログラムを考えると、支援者として受講生に期待するのは2つ。第1は、社会に通用する商品及び事業の開発。第2は、アントレプレナーシップの涵養。
結局のところ、レベル3行動変容の効果測定が実現できていないのは、アントレプレナーシップをブラックボックスと考えすぎ、「シップ」の中身を言語化とイメージ化できていないことに原因がある。
対策は、現在色々と検討を重ねている。この4月からの1年間の実践を通じ、検証していきたい。

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