アントレプレナーシップ・エデュケーター道場

お知らせ

2006/08/16

再びマレーニに来る!

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 久々の投稿になります。現在、海外インターンシップで2名の学生と共に、8月1日からの4週間、オーストラリア連邦クイーンズランド州マレーニに来ています。この地域を訪れるのは3年連続6回目です。人との出会いを通じ、旅行者としてではなく、滞在者として色々な面が見えてきました。レポートでは、教えない教育という視点からではなく、率直に、自分が知りえた情報を通じ、マレーニという地域の在り様を紹介します。今回から、複数回に分けて、特徴的なことを記していくつもりです。
 今回来ている学生がブログを立ち上げ、日々の気づきをレポートしています。一度、訪れてみてください。私のブログとは違い、写真が多く、感覚的にマレー二を味わっていただけると思います。
 URLは、http://plaza.rakuten.co.jp/withmako です。
 なお、私は、マレーニでの海外インターンシップを立ち上げるに当たり次のようなことを考えていました。ここに紹介します。ご笑読ください。
■異文化理解教育に向けたスタンス
 グローバル社会は、異文化理解に立った意見と行動を人々に要請する。しかしながら、異文化理解とは何かの問いに対する解は多様に存在し、未だ定まった見解が出されてはいない。本学部では、異文化理解は、異文化に接する人々がその場で考え、行動に移す中から、接する文化の人々との交流を通じ達成されるものであるとの見解に立つ。よって、グローバル社会において人々に求められるのは、いかに感じ、いかに考え、いかに伝え、いかに行動するかである。プログラムは、これらの要素が組み込まれている必要がある。
■グローバル社会の未来予測
 「いかに」の部分を効果のあるものにするためにも、グローバル社会のイメージを明確にする必要があろう。やはりグローバル社会のイメージも議論百出であり、経営学部としてのグローバル社会イメージが求められる。イメージは、学生にとって、異文化と接する際の行動の指針になるものであろう。
 そこで、私たちは、これからのグローバル社会では次のようなことが大切になると未来予測(21世紀中葉)する。
 ①生活することも、働くことも、等しく尊重する人であふれている。(生活と労働の一体化)
 ②困難に直面しても、好奇心と情熱を持ち続けている人であふれている。(好奇心と情熱の持続)
 ③ソーシャルキャピタルが、人の生活と働く上で、欠かせないものとなっている。(ソーシャルキャピタル)
 ④人は、あらゆる循環に価値を見出している。(循環価値)
 ⑤響働(きょうどう)する喜びと意味を皆が分かっている。(響働の喜び)
 ⑥グローカル(世界的に考え、地域で行動する)社会が基本的価値観となっている。(グローカル社会)
■コンセプト「素の自分で自然・人・文化と対話する!」の解説
 人は通説に大きく左右される。その通説が間違っているか否かの判断をしないまま、受け入れる傾向が強い。これは国内外問わず異文化と出会ったときに、先入観となり衝突をひきおこす。衝突を経験したら、解消するために通説を問い直す必要がある。そのときに求められるのが、素の自分に立ち返ることであり、衝突した相手と対話することである。衝突の相手は、時には自然であり、人であり、文化である。よって、「素の自分で自然・人・文化と対話する!」という姿勢が重要になる。
 これをビジネスの世界に置き換えても同じことが言える。衝突の相手は環境(エコロジー)であり、外国人であり、外資系企業の風土等である。時には、自国のそして自社の慣行が衝突の相手となる可能性もある。当然、全部を否定していては進展がない。そこで求められるのが、何かを新しく正しいと判断できる自分であり、それを広める対話(交渉力)である。
 「素の自分で自然・人・文化と対話する!」ことほど、言葉では単純であるが、実現するには大いなる努力を必要とするものはない。しかし、これは新たな未来を切り開くために「絶対に必要不可欠」な能力である。
■カウンターパートの候補
(1)カウンターパート マレーニ、オーストラリア
(2)選定理由
⇒ 経済停滞地域が、個々の起業家の努力と地域サポート体制の構築で、経済的、社会的、個人的な面で、地域の再構築が行われ、結果的に経済的な豊かさに結びついている。しかも、地域自らが自分たちの経験を振り返り、何が鍵となったかを自己分析しているところに特長がある。(詳細は、(3)を参照)
⇒ これは、変化に直面した際に、地域と個人の考え方と行動がいかに重要かを教えてくれる。学生にとり、それらの基本的な考え方を学び、体験することで、既成概念を取り除き、困難に直面した際の行動力面で、彼らに勇気と希望を与えるものとなろう。
⇒ とりわけ、日本経済の停滞に伴う就職難にあって、多くの学生は将来に対する不安が大きくなっている。人は個では存在すらできない。自ずと多くのかかわりの中で生きることになる。働くとはどういうことか、自分で自分の雇用を作り出すことの意味を体感できるプログラムを構築するためには、日本ではカウンターパートがなかなか存在しない。
(3)経済・社会・人心の停滞から復興・再構築までの経緯(ジル講演の報告書より要約、解説)
■変化の前史
①マレーニ地域で産出及び栽培されてきた農畜産物が価格面で海外製品の競争に負け、地元業者が閉鎖もしくは縮小の憂き目に会ってきた。
②この間、農産物等の大量生産、促成栽培や業者からの規格に合わせるためにも化学肥料を大量に用いた栽培方法がとられてきた。その結果、土壌汚染が進むなど、環境面での破壊も進展していた。
③結果的に、社会(コミュニティ)、個人レベルで経済面と心理面での悪化が進行し、個人の生活レベルでは生活保護を受ける水準に至っていた。
④1970年にジル・ジョーダンがマレーニで定住を始める。その後10年間は、新住民と旧住民の間に直接的なコラボレーションは窺われない。変化を望まず保守的な旧住民と、土壌汚染等の環境破壊を招いた土地活用を暗に非難する新住民との間に軋轢があったからであるとジル自身分析している。→鵜飼:この意識のすれ違いや活動に結びつかない状態は決してマレーニに限定されることではなく、日本においても新規事業を立ち上げる際の抵抗や、衰退商店街(中心市街地)での商店街振興組合と新規参入者・生活者との軋轢と同じ種類のものである。学生のみならず我々も絶えず直面する(している)問題でもある。
■変化の兆し
⑤1980年代初頭に、ジル等が中心となり商店をはじめる。その動機は、必要な自然食品がマレーニで購入できないことにあった。そこで、共同仕入れや自家栽培の自然食品を販売できる商店を、まずは自然食品派の自分たち向けに立ち上げた。この商店は、青果商以外に、就職情報、賃貸住宅情報等の情報交換場所であり、あわせてリサイクルの意味を問いかける場所でもあった(プラスチックバックの再利用、瓶の再利用等)→鵜飼:このジル等のとった行動に類似した動きは日本においても散見される。しかしながら、大きな流れとなってはいない。例としては、熊本県水俣市で約15年前に始まった、お母さん食堂。山間部で兼業農家をしている人々が、ある日、青果市場を見て地元の農産物が扱われていないことに驚く。自分たちは季節毎に種類も豊富な旬の野菜を栽培し、食べている。家族で食べきれないものは近所や親類に分け与えている。青果市場の農産物は全国ブランドの有名産地の野菜であるが遠距離を運ばれてきており、取れたてではない。また、全国流通の弊害として年を通じて同じ種類の野菜しか扱われない。同じ水俣市の都市部の住民は、実に乏しい食生活をしていると感じるようになった。そこで、地元の古くからの料理方法(各家庭に伝わるものも含め)で、自分たちの栽培した旬の野菜を料理し販売する食堂事業を始め、継続的な事業へと発展している。
⑥地元農家の女性がこのお店を訪れ、興味を持つ。そこで、実質的な新住民と旧住民のコミュニケーションが始まった。単にリサイクル品の提供だけではなく、旧住民の農産物を商店に置くことを認めたことがきっかけとなった。旧住民は何が良く売れ、何が売れないかを身をもって知ることとなったからである。つまり、新住民が提供する農産物は有機栽培、旧住民が提供する農産物は化学肥料による栽培であり、多くは有機栽培の農産物が売れたからである。旧住民はその理由を知るところとなり、彼らの姿勢自体が変化することとなった。
⑦ジル自身も指摘しているように、新住民は理想に燃えた頭でっかちであった。言葉でいくら理想を唱えても、保守的な旧住民は理解しない。実践の中で理想を実現して初めて共感を呼び、変化が拡散していく。
■変化の拡散と定着
⑧対話が生まれると同時に、その信頼関係をより強固なものとし、信頼に基づく必要性を伴った事業展開が、地域の変化を生み、結果的に経済的な豊かさと、社会的豊かさ、そして個人レベルの自信を復活させるということをコミュニティ自体が理解し始める。
⑨この域まで到達するには、一朝一夕ではない。試行錯誤を繰り返しながら、失敗を振り返り成功体験を積み重ねていく時間を要するからである。マレーニでは、およそ25年間で多くの学びを得てきた。本格的な変化の拡散を導いたのが、各種の新たな協同組合(cooperatives)の設立である。協同組合は、例えば、Credit Union、LETSystem、LEED等、地域の必要性に応じて設立されたものである。特に例に挙げた組合は、多くのマイクロビジネスあるいはコミュニティビジネスの登場を支援することとなり、重要な役割を果たしている。
⑩多くの協同組合の設立は、コミュニティ(地域社会)として、危機に直面した際に迅速な対応をもたらすのは、人々の信頼であり、パートナーシップであるということを地域にかかわる人々に浸透させてきた。
■経験の振り返り(ジルによるまとめ)
⑪過去25年間の経験を振り返り、地域自らが次のような結論を導き出している。
・新規事業は地域のニーズに根ざしていること。その最重要になるのが、共通のビジョンを描くこと、そして開始時点で明確な目標を設定すること、さらに、新規事業を実際に機能させるためにコミュニティ内に提供者、使用者を含め明確な動機が感じられること等である。
・それぞれの新規事業には、チャンピョンもしくはマザーの存在がなくてはならない。チャンピョンもしくはマザーは、最初の段階から事業が軌道に乗るまでを支える人物であり、活動に当たってはかかわる意欲のある人々を幅広く中に取り込むことが重要である。→鵜飼:このマザーは、市民起業家と称されている人物やグループと同義である。
・共同の中から相互に学びあうスキル。
・絶えず新たな意見や行動力を持った人々が参加しやすいような方法を探ること。
・異なる組織が相互に支援しあうこと。

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